アメリカ前大統領、ジョージ・W・ブッシュの歴史的不人気ぶりは、今更説明不要。世界を巻き込んでの愚策の数々は笑い飛ばすにはあまりにも深刻過ぎるけど、 この人どうしてこんなになっちゃったの? それなりに理由があった筈……。そんな疑問にひとつの見解を提示した本作。名門一家の跡継ぎ長男として生まれ、 進学、就職、各種尻拭いも全て父親の庇護下。
敷かれたレールですら脱線続き、何事も全う出来ないアル中のダメ息子ながら、優等生な弟に肩入れする父親に、常に自分だって認められたいという欲求を抱え てきた。そうして限界に至った鬱屈パワーの反動か、40歳にして「生まれ変わる」。改宗と禁酒の末に、なんと天からの啓示を受けた、「お前が大統領になる のだ」と……。ええ~っ(笑)。
家族ドラマとして見れば、「ボクだってパパに褒めて欲しかった」的悲しみを湛えたこの長男は、あまりにも人間的過ぎて同情を禁じ得ない。しかしホワイトハ ウスに集う老獪な取り巻き達に操られ、9.11に端を発する戦争がコントロール不可能なまま悪化していく様は、同情では済まされない。ファザー・コンプ レックスを抱えた邪気はないアダルト・チルドレンを、狡猾な側近の大人達が利用した、という印象で描かれる。
それぞれ豪華キャストが演じ、ずば抜けた厚顔ぶりのラムズフェルド(スコット・グレンが好演)など爆笑。さんざんコケにされ尽くしたジョージ・W・ブッ シュに対して、意外にも「なんか、かわいそう」といった感情が芽生えたのも、近作で益々評価の高いジョシュ・ブローリンの憑依ぶりによるところが大きそ う。感情移入するには十分の、苦悩する一人の人間像が、油の乗りきった俳優の力によってもたらされている。(増井志乃)
2009.5.14.update

