助演としては既に数々の作品で、凄みのある存在感を示してきた笑福亭鶴瓶が初主演となる本作。都市型の大病院における、事務的な医療に疑問を抱いた青年医師 (瑛太)が自ら研修にやってきたのは、山あいの小さな村。地域にたった一人の医師(鶴瓶)が、しっかり者の看護師(余)と共に、高齢化著しい地元の現実に なんとも鷹揚に対応している。
この人懐こい医師が、村に欠かすことの出来ない存在として機能している様は、次第に青年医師にも意義を与えてゆく。そんな村 民と診療所との蜜月関係が、医師の突然の失踪で崩壊する。医師に何があったのか、何者だったのか。命の恩人、はたまたただの嘘つき……。
前作『ゆれる』でも、人間の多面性をあぶり出す鋭い視点が冴えていた西川監督が、更に一歩踏み込んで「いのち」に関わる「嘘」を描く。失踪した医師、途端 に医師を悪く言う村民、見て見ぬふりの看護師、ワケ知り風な薬の営業マン(香川照之)……。
人々は時に愚かでもあるけれど、清濁併せのみ断罪しない監督の 視点に、そして鶴瓶と八千草 薫の雄弁な佇まいに、大いに救われる。温かく滋味あふれる、極上の人間ドラマ。(増井志乃)
2009.5.14.update

