上海美術映画製作所。1957年に設立後、文革の空白期を経て、多くの優れた作品と人材をアニメーション界に輩出してきた。日本で触れる機会の少ない珠玉作品群が、ヴァリエーション豊かなセレクションでまとめて公開されるという、極めてレアな機会。短編を中心として組み合わせたA・B・Cの3パターンのプログラムで、全12作品に出会うことが出来るのだ。
初の水墨画アニメ『おたまじゃくしが母さんを探す』は1962年の作品。たっぷりと余白を残した画面の中を、水辺の小動物達がリアルななめらかさで動きまわり、一刷毛で引かれた薄墨の水草や蓮の葉は幽玄のグラデーションを魅せる。小さな命たちの愛くるしさをあわあわと描き、音楽と語りも甘やかで、子供の頃ときめいて浸ったアニメとの懐かしい蜜月時代が蘇る。小さな宝石のように美しく、夢のようにやさしい貴重な16分。
中国少数民族の少年が悪の大王にとらえられた父を探しにいく冒険譚『火童』では、ストーン・ウェアのようにシックな質感で民族色を奥行豊かに見せる、切り紙アニメーションの手法に目を見張る。
セル・アニメ『三人の和尚』では一転して、不思議な縦横比の画面に削ぎ落とされたシンプルな線とポップなカラーリング。とぼけたユーモアはとても今日的なセンスで、30年前の作品とは驚き。
他にも様々な手法で作られた芸術性高い小編の数々がたっぷり、しみじみと温故知新。(増井志乃)
2010.3.23.update

