ベース・プレイヤーでヴォーカリスト、母校バークリー音楽大学では20歳という最年少で講師に迎えられたという驚きの才媛、ほんの数日前に『グラ ミー賞』最優秀新人賞を受賞したばかりのエスペランサ。タイムリーな来日公演に、満席となった客席は期待値と熱気で充満している。
チェンバー・ミュージック・ソサエティの弦を担当する3人が、暗いステージ上にスタンバイする。ステージ右隅、サイド・テーブルには一輪差しとワイン・ボ トルとランプ、その隣に1人掛けソファーがひとつ。エスペランサの登場、外から帰宅したのであろう彼女は暗い部屋にランプの灯りをともし、上着を脱いでソ ファに腰を下ろす。グラスにワインを注ぎ一口飲んだあと、目を閉じて深くソファに沈み込んでいく……。ドラマチックな演出で始まった演奏。ピアノ、ドラ ム、コーラスも迎えて新作からの楽曲の数々は、抑制の効いたシックでエレガントなパフォーマンスがどれも秀逸の一言。華奢な彼女がしがみつくように 奏でる大きなベースの音色に、伸びやかで繊細な自らの歌声が自由にじゃれて遊んでいるかのように親密に絡み合う。
ストリングスの優しいイントロに促されるままに、まどろみの世界にいざなわれた彼女の束の間見た夢のような、複雑で情熱的なめくるめく音の景色は、彼女が 再びソファに戻り再び弦のアウトロの流れる中でまどろみから覚めて、上着を羽織り退場することで途切れる。儚く美しい、なんと趣味の良い極上の室内楽だっ たことか。
神々しい程の才能・チャーミングな容姿・抜群のセンス、全てを併せ持った若きエスペランサの魅力に終始うっとり。完全なるフォーリン・ラヴ成ることウケアイ、です。19日まで同所で開催。(増井志乃)http://www.bluenote.co.jp/jp/artist/esperanza-spalding/
2011.2.18.update

