僕が一番好きな雑誌、関西の街雑誌『Meets Regional』。なぜ好きか? 店を単なる情報、アイテムとして羅列して紹介するのではなく、店の向こうに人が、ストーリーが、何より、その店のメニューの向こうに空気が、匂いが、カウンターで盛り上がっているライヴな写真と、味わい深く、自腹でしっかりと店に通っていることが分かる原稿でもって伝えてくれるからだ。
そのライターの象徴的存在がバッキー井上。20年前の創刊時から一貫して、地元の京都をベースに街に店に関わってきている。
この本は、彼が『Meets Regional』他で書いた文を、京都に絞って編集されている。昼は錦市場の漬物屋の主人である彼が仕事の合間、仕事が終わって、とフリースタイルで店に、カウンターを回遊する。大事なのは、酒の銘柄や、料理のうんちくなど一切関係ないところ。これだけ毎晩、店に通っていたら、そこにうるさく、こだわるのが常なのだが、彼が言うところの、店に居て流れる時間、気分が「ゴキゲン」か「ゴキゲンでないか?」という皮膚感覚で、右脳で判断しているところが、素晴らしいところなのだ。
むしろ、うんちくなんたらを語るのが恥ずかしいし、子供っぽいことであると感じてしまう。
そう。本書のタイトルが表現し切っているとおり、人が、空気が、匂いが、そこでしか感じれられない時間の流れを大事と思わなければ、自分の家で飲めばいい。でも、それって、おもしろいか? その本質的な命題を突きつける。柔で楽な方に流されがちな自分にだ。
2009年9月25日.update